11/100 雑誌記者

世の中は偏見と誤解と、そして差別に満ちている。それらを少しでも減らしていくものが「話すこと」なのかもしれない。

100人インタビューで先日、在日朝鮮人である黄(ファン)さんにお話しを伺いました。マイノリティであることを幼い頃から感じていたという彼女は、だからこそ、マイノリティに目が向くといいます。月刊イオという、在日コリアンを主な対象にした日本語による月刊誌の記者をしている彼女。飲食店の店主や俳優などにインタビューをするときもあれば、性的マイノリティや差別を受けたことがある少数派の人々に話を聞いて、記事にすることもあるといいます。

マイノリティであることは差別を受けやすい存在であるのでしょう。何気ないひとことに傷つく人がいると彼女はいいます。たとえば、冗談で「オマエ、ゲイじゃない?」と言われ、その場では笑ってごまかしたが、非常に傷ついた……、そんな話をインタビューイーから聞くと、人は努力しなくてはいけないと、ファンさんは強く思うそうです。

肌の黒い人種の方々を見るだけで、怖いと思ってしまうこと。皆さんもありませんか?その人たちと話したわけでもなく、ニュースなどのイメージだけで怖いと思ってしまうこと。そんなことが世の中には溢れている。何気なく使ってしまう一言には知らずに差別している可能性があるという事実。
もちろん差別するつもりはないのでしょう。でも、言われた本人にとって、時として悪意ある言葉よりも傷が深いことがある。ファンさんはそんな悲劇をひとつでも減らしたいのです。
相手と話すこと、話して、傷ついたという事実を知ること。これは簡単にできることではありません。でも、それでもファンさんは話をしなくては始まらないといいます。そして記事という形で発信して、誰かの心に届けば、と。

あー、重い話になっちゃいましたね。でも、差別はどこにでもあることだし。ほら、お隣の庭の芝が青く見えるのも、同期が先に昇進したり、そんなことって自分との比較ということで、ゆくゆくはね、差別につながったりする。
差別があるという事実を認めたうえで、どうするか。その答えを探すことは、非常にシンプルに言えば笑顔が増えるわけ、なんですよね。そして人生を豊かにしてくれる。だって、ほら、黒人(あえて使いますが、もちろんここには悪意はありません。わかりやすい表現として)でもいい人はいっぱいいるわけだし、性的マイノリティの方々がどんなことに悩んでいるのか、それを知ることって、素敵なことではありませんか?これは非常に難しい問題です。わかっていますが、今回はあえて、この話にクローズアップしていこうと思います。

この前、高校の授業料無償化が話題になりましたよね。「おお、無料になるんだ」って思った方も多かったのではないでしょうか。でも、ここに無料にならずに訴訟にまで発展したことがあるわけです。朝鮮学校についてなんですけれど、これについてもファンさんとはいろいろな話をしました。もちろん、チトソシはなぜ、朝鮮学校が無償化にならないんだ、という話をしたいわけではありません。こうした事実があるということを紹介したいのです。
「朝鮮学校によっては財政が厳しく、教職員への給料の支給が遅れてしまう場合もあるんです」とファンさんはいいます。自らの生活を支えることと、同胞(在日朝鮮人は仲間をそう呼ぶそうです)に民族のアイデンティティを伝えていくこと。その狭間で頑張っている人たちがいる。日本政府が考えること、在日朝鮮人が考えること。そして、在日朝鮮人を支援していく県や団体がいること。

そんな人たちがいる。それを知ってもらうこと。それがどんなに大切なことなのか。ファンさんに出会って、思いました。

月刊イオ
http://www.io-web.net/

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