朝の砧公園

きっかけは千歳船橋にある学習塾「共育学舎BCI」さんのSNSだったんです。

そこで紹介されていたおすすめの一冊、「センス・オブ・ワンダー」(レイチェル・カールソン著)を手に取ったことが始まりでした。本の内容を簡単にまとめてしまいますと、自然に親しむということは子どもにとって非常に大切であって、動植物の名前を覚えることよりも、そのものに触れて、体験することが何倍も何千倍も大切なことだ、というものです。

著者と甥っ子の体験記を中心に話が展開していき、いくつものエピソードが紹介されます。そのなかの一つがとても印象的だったのです。それは渡り鳥の姿を望遠鏡で眺めるというもの。夜、そして、月をバックに。そう、ETのラストシーンのように、渡り鳥が月を背景にシルエットで飛んでいく、そのシーンを見るというものでした。

もちろん、それを見るのは簡単なことではなく、大切なのは辛抱強さと書かれていて、望遠鏡を月にセットして、ひたすらに鳥が通過するその瞬間を待つというもの。辛抱強く待つ間に、森が発する音、虫の音、鳥の鳴き声、なんだかわからない動物の息吹などを体で感じるようになると。身を包む神秘に、触れていく大切さがそこにありました。

それを読んで、いいなぁと思ったのです。そうか、その神秘は何もアメリカに行く必要もない、もしかしたら砧公園ででも体験できるかもしれない。

望遠鏡もないし、渡り鳥を見る必要もない。静寂に包まれた森に親しむこと、これが大切なのだと気がついたのです。朝日が昇るまでの夜と朝の境目であったり、夜に寝っ転がって満天の星空を眺めるだけでも貴重な体験ができるだろうと思いました。

こんな楽しそうな体験はひとりで行っても楽しさは半減します。息子を誘いました。夜であったり、朝であったり。そんな特別な時間帯に自転車で外出できて、なにやら楽し気なことをすることが分かった彼はふたつ返事で「参加」を表明しました。

ところが、なかなか週末、晴れてくれないのです。

金曜夜に雨が降れば地面はぐしゃぐしゃ。もちろん、週末の朝に雨が降っていれば夜空は見えないわけで延期になります。そうこうしているうちに時は経ち、急に肌寒くなりました。夏の終わりです。

もう、難しいかも、そう思った週末の早朝、4時30分のこと。何か、「今日?」という予感がありました。空を見あげると星空が一面に広がっています。寝ぼける息子を静かに起こし「公園行くよ」と伝えると、はじめ何を言っているのか分からなかった彼にスイッチが入りました。むくっと無言で起きる彼。

出発までの準備は少なかったとはいえ、電気を付けたり、着替えたりと妻は「なんだ、なんだ、なんなんだー」とちょっと不機嫌(そりゃそうだわなー)。申し訳ないなーと思いながら、息子と二人で家を後にします。

自転車にまたがると、青とも、紫ともいえるオブラートが町に下ろされているようで、いつもと違った町並みです。それに大人のボクでも気持ちが上がっていきます。自転車を走らせると、空が赤く染まり始めていました。ちょっと遅かったかも。

砧公園までは10分程度。その間にも空の色は変わっていきます。見えていた星が見えなくなっていく。

公園に到着すると、ギリギリ夜という感じでした。もうすぐそこに朝がやってきています。自転車を止めて、園内を歩きだします。芝は一面朝露に覆われています。失敗した。寝転がれない。そして巨木の根がちょうどベッドのようになっていたので、身体をあずけながら、空の色の移ろいを観察するとにしました。でも、もう、夜は終わってしまったのかもしれない、それほどに生き生きとした色が広がり始めていました。

もう、朝ですね。星はもうない、ですねwww

こんな具合です。もう朝が訪れてしまいました。これはリベンジが必要ですね。幸い、冬に近づくと空気は澄んでいくし、夜は長くなるので、夜空を楽しむ機会は増えていくだろうし。まぁ、今は、朝を楽しもうと思っていると……

遠くからサックスの音色が。うわ、いいな。ものすごく得した気分。ほおじ茶ではなくって、ホットコーヒーがあればいいのに、と何度思ったことか。曲名はわからないけれど、気持ちのいい曲。いつまでも聞いていられる音色です。

音色を楽しみながら、公園を眺めていると、いろいろな人がいることが分かります。コードレスイヤホンを耳に装着しながらランニングしているご婦人、軽く走っている男性、ゆっくりと体を動かす太極拳チーム。朝の光に目が慣れ始めると多くの人がすでに休日を楽しみ始めていることが分かりました。

時間は6時過ぎ。空は青空に、森は場所によっては闇を抱えてままの時間帯。まだ、夜と朝がミルフィーユになっている時間帯でした。根に寝転がるのは疲れてきたので場所を変えます。ベンチとテーブルがありますので、ここのベンチに寝転がる。シュラフがあったらいつまでも寝ていられるだろうなと思うほどの快適さ。

見あげると月がまだ輝いていました

月が見える、と感動していると、館内放送がなり始めます。何を言っているかは聞き取れませんでしたが、どうも懐かしい、心にひっかかる音色がだんだんと大きくなっていきます。

ラジオ体操のテーマ曲です。周りにいる人たちは音のなる方へ体を向けて、ジャンプし始めました。ああ、この曲。身体がかってに動き出す。体操しなきゃと思わせられる何かが刷り込まれていて、ジャンプし始める自分を見つけます。心地よい。第一の後に、第二まで体操に参加して、みんなで波長を合わせるように深呼吸をして、放送は終わりました。

同時に、何かが終わったとばかりに蜘蛛の子を散らすように人たちは散らばっていきました。ああ、早朝の朝礼が終わったような、そんな一区切りついたような気持ちに包まれます。この感覚はちょっとクセになりますね。明日も早起きして、ラジオ体操を一緒にやりたいな、みんな知り合いじゃん、という感じがいいですね。

最初は夜空を見たくて自転車を走らせたのに、ラジオ体操で心が満たされる。人生は未知との遭遇。予定調和なことなどあるわけもなくて。それが悪いこともなくて。出たとこ勝負で形になっていく。そんな心地よさを知った週末の早朝でした。

みなさまも朝の公園、行ってみませんか? 空気は澄んでるし、何は具体的にはわからないけれど「得した気分」になるし、おすすめです♪

帰ってシャワーして、二度寝する。そんな贅沢だって待っています。ボクですか?もちろん、寝まして、起きたらランチという、ものすごく充実した土曜を過ごさせていただきました。またやろっと。

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