今日ご紹介する桜スポットは、千歳船橋の桜丘にある小さな公園です。通称「桜丘ホール」、正式には別館桜丘ホール・別館会議室の裏にある公園です。いきなりの別館表記。さくらよりも気になるところですが、どうして別館なのかは世田谷区のホームページで検索してくださいね。
ここの桜は一言でいうと「色っぽい」。色気あふれる若者男女という感じの色気ではなく、スナックのママさんというか、ママさんは言い過ぎですね。チーママくらいでしょうか。妖艶。そう、妖艶という表現がぴったりです。色っぽいけれど、危険というか・・・・・・はぁ、そんな恋をしてみたい。危険な恋。
ってかなりの脱線ですが、ここの桜は色っぽいんです。枝のはり方とか、幹の黒さとか。見上げたカットを撮影してみました。ほら、妖気漂う感じがしませんか?
『櫻の樹の下には』 を思い出します
妖気といえば、「櫻の樹の下には屍體が埋まつてゐる!」で始まる小説『櫻の樹の下には』(著:梶井基次郎)を思い出しました。思い出したといっても、恥ずかしながら冒頭文しか知らないんですけどね、それで読んでみました。
読んでみるとまぁ、勘違いというか勝手な思い込みをしていたことが多々ありまして。クラスで全然話したことがないやつと駅でばったり出会って、傘を貸してくれたみたいな。おいおいあいつ、すげー優しいじゃんっていう感じのことがいくつか出てきたんです(なんでしょうね、なんか今日はテンションが高い。たぶん、もうすぐ春がやってくるっていう陽気で、おかしくなり始めたんだと思います)。
一つ目は屍體(死体)は人間だけではないということです(女性が埋まっているんだと思い込んでいました)。犬猫だったり馬だったりと人間以外についても記述されています。
どうして死体が埋まっていると思ったのか
どうして主人公は櫻の下に死体が埋まっているのだろうと考えるに至ったのか。それはまったくもって想像外のシチュエーションでした。それは、花見をしていて「なんであんなに桜は美しいのか」と思ったことに端を発しまして、どうも美しい理由を考えていたところ、死体が埋まっているから美しいのだと思い及んだみたいです。ということは単純に主人公は桜を見ながら酔っぱらったんじゃないか?と私は思ってしまったわけです(想像の域を出ませんが)。黙って、桜の下で酒を楽しめばいいのに、たぶん話していた相手がほかのだれかを見つけて挨拶にでもいっちゃったんでしょう。ポツンとしてしまった主人公。上を見上げて、はて、なんで桜は美しいのだ?と無駄な疑問を生み、考え始めてしまったのでしょう。酔っぱらっているから思考回路も開放されちゃって、それでそんなことを思うわけです。で、素面な友達にあうなり、「桜の樹の下には死体が埋まっている」と話す。ほんとうに迷惑な酔っ払いです(笑)。
物語全般、おどろおどろしい話が続くのかと思っていたのですが、主人公は誰か(たぶん友達とか、部下とか、後輩で同性っていうのが濃厚かと)に話しかけている状況で、話が紡がれていくんです。おいおい、俺はこの前な・・・・という感じです。物語の長さは原稿用紙で5枚程度。かなり短いんですよ。短編も短編ですね。
比喩が非常に美しい
それとですね、主人公が美しいものを表現するときの比喩が実に美しい。櫻がそれらの死体からエキスを吸い出して養分としているくだり(こう書くと非常にグロイですが)とか、ウスバカゲロウの羽を表現しているところや、コマが停止して見えるくだりとか。あまりの美しさに映像が浮かんできました。
という物語なんです。ちょっと読んでみたくなりました? ただ、旧字体で書かれているので読みづらいひともいるかと思います。でも、ゆっくりと一足一足踏みしめるように読むと梶井基次郎さんの世界がばーっと広がっていくと思います。広がっていく瞬間、これが読書の楽しみですよね。桜の樹の下に座りながら、日本酒を飲みながら読書する(ビールでもいいですけど、花見はやっぱり日本酒よね)。そんな春のひととき、いいですよね。間違っても、何かが埋まっているのでは?などと考えないようにね。
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