千歳屋インスタライブ

祖師ヶ谷大蔵にある呉服屋、千歳屋さんが行ったインスタライブを見学させてもらいました。

いろんなことを考えながら傍で見させていただいたのですが、結果として

目次

めちゃくちゃ、引き込まれて
「へぇ」を連発し
気がついたら軽く30分経ってました。

スゲーんですよ。やっぱ専門店の話は引き込まれるし、当人たちは「こんな話を聞いてもつまらないでしょ?」ってスタンスなんすけど、これがもう、驚きと興味をそそるエッセンスの宝庫 でした。

ざっくりとライブの内容をまとめたのがこちらです。箇条書きですんません。※クリックするとアコーディオンが開きます。

[su_spoiler title=”インスタライブの要約” style=”fancy” open=”no”] 東京の養蚕農家は八王子に1軒だけ
日本で販売している絹はほとんど中国産
国内産は全体の0.2%のみ
一反作るのに約2500個の繭が必要
絹には日本製と純日本製がある
蚕は年に2回飼育が多い
蚕が卵から繭になるまでに1カ月
蚕は桑の葉を1日4回くらい食べる
蚕は葉に乗せてあげないと食べない
養蚕業はアメリカのストッキングで花開いた
戦後和装ブームが起こった
和装ブームによりコストカットの波。中国産が国産を抜く [/su_spoiler]

ってものでした。

 内容はどれも興味深いのですが、内容よりももっと、もっと気になることがありました。それは目の前で話を聞くのと画面を通じて聞くのでは感じ方がかなり違うってことです。
なんだろうこれは??
 声の伝わり方とか臨場感によって違うんだよって言われそうですが、もっと根本に違いがあるんですね。
 それはー、画面で視聴していると完璧な「他人」でいられるってことです。興味がなくなったら、その瞬間に試聴中止しても、話し手には「私はあなたの話に興味がなくなったので見るのをやめます」というメッセージは一切伝わりません。これがすごいことですよね。運転していると性格が変わる人っていますよね。これは車内が遮断されているので、声が相手に聞こえないという確信と自分だけのプライベート空間が広がっているので気持ちが大きくなるといわれています。これに似ているんですよ。絶対に相手にはあなたの声は届きません(チャットとか発信すれば別の話ではありますが)。だから、欲求がよりシンプルになり、つまらない(または理解できない)場合はすぐに消してしまうんですね。
 日本人は相手のことを考える民族です。本音と建前とかいいますが、簡単に言えば カッコつけ です。コンビニに入れば買いたいものを一つだけ買うのは悪い(正直に言えばカッコ悪い)ので、買ってもいいかなというものをもう一つ手にレジに並びます。あなたにも無意識にしてしまった「カッコつけ」、ありますよね。
 だから、直接話を聞いているのに、試聴中止するにはかなりの勇気が要ります。席を立ち、その場を去る。話し手に「聞くのを辞めた」という無言のメッセージを伝えることになります。カッコ悪い。優しい人(心の弱い人)はとくにそのような負のメッセージを発することは避けたがるものです。もしかしたら話し手に自分の顔を覚えられ、何かお願いしなくてはならないときに力を貸してくれないのではないかという不安に包まれます。だから席を立つことは極力避けますし、目の前で繰り広げられるライブを前向きに聞き続ける。居眠りなどなるべくしないように頑張ります。「せっかく来たのだから、何かしら自分にとって得するものがないだろうか」と集中して話を聞くこともあるでしょう。



 一生懸命作ってもつまらないとあっという間に次の動画へと行ってしまう。たしかに製作者としては悲しい瞬間です。でも、でも、オンラインで視聴することにも素敵なメリットがあります。それは知り合いというバイアスが一切かからない「他者」だからこそ、その世界に引き込まれる奇跡が訪れるかもしれないんです。何気なく見ている人の中で、意図もせずにそのコンテンツが「心に突き刺さる」可能性があるんですね。呉服の「ご」の字も関心がなかったのに、たまたまこの動画を見て、何気なく見ていたら引き込まれてしまう、という偶発性です。多くの人に目に触れればこの偶発性の確率は高まっていきます。10人しか見ないのであれば引き込まれる人は現れないかもしれませんが、1万人が視聴した場合確実に100人くらいは「呉服ってかっこいいなぁ、お店に行ってみようかなぁ」と思うはずなんですよね。母数が大きくなればなるほど、奇跡が起こる確率はうなぎのぼりです。

 では、そのコンテンツをどうやって多くの人に見てもらうか、それが知りたいですよね。それはね、なんですよ。SEO対策とか、キーワードはこのようにつけるのがいいとか、タイトルはどのようにつけた方が目に付きやすいなど、人々の目に留まるようにする改善策・対策があると言われていますが(専門業者もいます)、実際にはどうしたらいいのかは誰にもわからない。これが真実で、これが面白いところなんですよね。

 たしかに対策はありますが、それは数多く試作して、たまたまうまくいったことを寄せ集めたサービスが多い印象です。たとえば、昔のHotDogの恋愛特集みたいなものです。こうしたら告白は成功する!と特集を熟読したからといって確実に両想いになるわけはありませんよね。占いと同じで当たるも八卦、当たらぬも八卦というか、たまたま対策がうまくいくこともあるし、うまく行かないこともある。うまくいったとしてもたまたまであり、絶対はない。だから、絶対これで売り上げがあがりますよ!と言い切ってしまう業者は怪しいなぁとワタシは思います。ブツブツ。。。

 見てもらうのは「運」であると申しましたが、ここに知識の泉があるのに多くの人に見てもらうことが叶わないというのは悲しくて切ないものですね。興味のないテレビ番組を惰性でダラダラと見るよりも、面白くって、意味のあるコンテンツなのですが。。。。。なにせ万人が呉服に興味があるかといえばそうとはいえないので、みんな!これ面白いから見て!と強くおすすめするのも、なかなか言いにくいものです。でも、先ほど申し上げた偶発性が生まれます。モヒカンで皮ジャンで北斗の拳の世界観が好きな女性が、なぜか千歳屋さんの動画を見て呉服の世界にはまってしまうということが起こる可能性があるんです。可能性がゼロではないというのが人生の面白いところですし、人間とか社会のすばらしさですよね。



そのうえで、どうしたら 一人でも多くの人に見てもらえるのか 考えてみました。
※もちろん、これを実施したからと言って確実に視聴者が増えるとは限りませんのでご注意くださいね

初心者向けにプログラムを作る
ボクは千歳屋の店主・内海さんを知っているので興味を持てますが、初見の方は興味を最後まで持ち続けることはほとんどできません。だって、内海さんのことは知らないし、別に呉服のことは興味もないし、そんな人がほとんどです。でも、中には少し話を聞いてみる、立ち止まってみる人が出てきます。そうなったときは「しめたもの」です。しめたものにするには簡単な自己紹介が効果的です。自己紹介を聞いてもらえれば、内海さんはどんな人で、どんな思いで呉服店を営んでいるのかとなんとなくわかるようになります。それでまた1歩、お客さんは近づいてきてくれます。そのあとは、この動画・ライブは何を伝えようとしているか話すといいです。ライブであれば演目がわかるようにするのも親切な印象を与えます。例えば落語の演目のように、今話している内容を和紙に書き、内容が変わるとパラりとめくるとかでも面白いでしょうね。画面に話している内容が映るので、「ほうほう、蚕の話をしているんだな」ということが一発で分かります。※和紙に書く演目はアイキャッチになるように「蚕って触ったことある?」とか「蚕って社会科見学で見たよね」とか、見ている人を引き付けるキャッチにするのがいいですね。

質問に答えるタイミングが大切
インスタライブの醍醐味は好きなときにチャットで気軽に質問できることです。でも、ここに問題があります。ライブのプログラムによってはなかなか回答してくれないんです。まずはプログラム通りに進行して、最後にまとめて質疑応答にしようと思いがちです。それでは見ている人が飽きてしまいます。発想の転換が必要なんですね。大切なのはライブをプログラム通りに終えることではありません。大切なのはお客さんが知りたいことを伝えることです。だから質問は大切にしましょう。
 お客さんが欲しいのは質問への回答です。でも、回答を聞くために最後まで見なくてはいけない。そう思うとお客さんはかなりうんざりします。せっかく質問したのに、答えてくれない、答えてくれないなら視聴をやめようかなと思ってしまいます。
 だから、質問&回答は途中で挟み込むのがいいんです。話しているテーマとテーマの間に少し時間を作るようにしましょう。その小休憩で質問を取り上げてその場で回答をします。そうすればお客さんも回答を聞きやすいですし、回答を聞いて「ふーん、なるほど」と思えば、次のテーマも聞こうかな?と思います。

 「わからないこと、知りたいことがありましたら随時チャットで質問してください。テーマとテーマの合間を見て回答していきます」

と冒頭や、テーマとテーマの間の小休憩で挟んでいくとお客さんはわかりやすいです。アシスタントがいらっしゃるのでしたら、質問が来た段階でアシスタントの方が「質問来ました!ありがとうございます!」と声をかけ、「回答はもう少し後で(できれば〇分くらいあとと具体的な時間を伝える)回答コーナーがあります」と話し手の方がフォローするとベストですね。

 話しているテーマと、質問がずれている場合はいっそのことプログラムを変更するのも手です。今回は質問が多いので当初話そうと思っていたテーマは次回にいたしまして、今回は質問への回答を中心に進めてまいりますねと伝えてプログラムから離れてしまいます。あとは質問を読み上げて、回答を繰り返す。結果としてテーマはなくなってしまいますが、一番大切なお客さんが知りたいことを答えていくので、お客さんはお店への興味がかなりわいている状態です。お客さんがお店に興味を持つこと、これがライブを行う目的ですので目的を達せられたことになります。テーマは二の次です。

リハをして臨むこと
 ライブはぶっつけ本番をしてはなりません。ライブのいいところは編集をしなくてもいいところで、内容について何も決めていないと脈略がなくなり、とてもつまらなくなります。人は論理的に説明してほしいものです。A+B=Cだったり、起承転結だったりとある程度予想できる展開をしてくれる方が安心できます。どのように説明していくのだろうかとドキドキしたり、え?この話は何についての説明なの?と途中で話が遭難すると視聴者の方々は非常に困ります。そしてつまらないという判断をして視聴をやめてしまいます。
 だから慣れるまでは恥ずかしくてもしっかりとリハーサルを行うこと。できれば誰かに聞いてもらうといいです。リハーサルを聞いてくれた人が「いいんじゃない」と判断してくれるようになれば、あなたの自信も付いてきます。これが一番大切なんです。



参加者と一緒に作ってライブをいきましょう
先ほども少し説明しましたが、大切なのは視聴してくれたお客さんです。何人参加してくれたということはたしかに気になります。でも大切にしたいのは参加してくださった一人一人のお客さんです。ある程度プログラムに余裕をもって、参加者の名前を読み上げて、「〇〇さん、ご参加ありがとうございます!」と一言挟んでもらうだけでも、視聴者はうれしいものですし、なんか楽しそうだな、一緒に参加しているんだなと思うようになります。話す人も楽しく、聞く人も楽しい。これが一番です。

プログラムはお客さんと作る
お店のスタッフだけで作ると、お客さんが何を知りたいのか正直分かりません。ですので、常連さんと一緒に作っていくとお客さんが知りない内容に変更できるうえに、お客さんもうれしくてつい手助けしたくなるものです。注意したいのは企画者のひとりとして「がっつり」と入ってもらうのではなく、「今度〇〇をテーマにしたライブをするんですけど、どんなことを知りたいですか?」と軽めに聞くのがいいですね。あ、それなら私も聞いてみたいと思ってもらえる、その距離感が大切です。

目線は気しなくていい
カメラ目線から外せないという人もいるかもしれないが、あちこち動かしても大丈夫です。じっとこちらを見ながらスピーカーがしゃべり続けるって考えてみてください、ちょっと怖いですよね。だから、目は泳いでもいいですし、考えてながら話すときは目線を外したり、場合によっては目をつぶったりもOKです。ただ、ひとつだけ注意したいのは、伝えたいポイントはカメラ目線にしましょう。そうすると目線に寒暖が付いて、「ここは伝えたい一番の内容なんだな」と視聴者も変わるようになります。

続けること
行き当たりばったりでライブを行うのではなく、伝えたいことをリストアップして全何回行うのかアウトラインを作ることが大切です。一回一回の視聴者数で一喜一憂するのではなく、決めた内容はしっかりと続けること。1人でも続けて見てくれる人はいるので、途中で辞めてしまうとそのお客さんの信頼を無くしかねません。最初の視聴者数が少ないと落ち込むこともわかりますし、続ける意味を見失いがちです。でも、続けないとバズルことは絶対におきません。大切なのはコツコツと制作して、コツコツと改善していくことです。コツコツは大変です。地味でつまらない。でも、それはやらなければならない。だから、いっそのこと「楽しんで」やるのがおすすめです。物の考え方でしょうが、こんなに改善したし、内容もよくなったと思うのに一人しか増えなかったと思うのか。それとも、これだけやって改善したから、一人増えたやった!と思えるのか。ライブのコンテンツ作成やYoutubeの動画コンテンツもそうですが、少しの変化をいかにポジティブに捉えることが出来るかがカギです。

ちょっと考えてみてください。一人増えるってことはものすごいことです。大々的に広告を打っても一人お客さんが増えるかわからない時代です。時間はかかるので、厳密には人件費はかかっていますが、自分たちにスキルが蓄積されて、そのうえで一人増やすとができた。なんて素晴らしいことなんでしょう。そのように物事を多角的にみることで、コンテンツもほかの人が思いつかないような面白いものが出来ていくんだと思います。

大変ですけど、楽しく、作り続ければ、
1万人が見る舞台へ踏み出せる日が、きっと来ます。

おしまい。

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