[su_box title=”お店情報”]17:30-22:00
日曜・祝日休
03-3483-5182
東京都世田谷区祖師谷1-9-12
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「臭うんだよね、水道水は」
取材で訪れたとき、2代目の高橋さんはアルカリイオン水をアイストレーに入れていたんです。トレーの数は30以上はあったかな。
その数をみて、たかはしさんは人気店だなと再確認しました。お客様に水道水の臭いを感じて欲しくないという気持ちは全てのお客さんに届いてないかもしれない。でも、これがこの店の日常ということに驚かされました。
昭和25年に創業したのは高橋さんの義理のお父さんだったそうです。サラリーマンだった高橋さんは脱サラして「やきとり たかはし」で働き始めます。1年半、サラリーマンをしながら、料理教室に通ったそうです。
「なんかさ、箔がつかないじゃん」
って笑いながら話してくれましたが、そんなに簡単なものではなかったでしょうね。お父さんとの関係がどうだとかではなく、35歳から飲食に足を踏み入れていくことの素晴らしさ。まな板に何げなく置かれた「手入れを入れ続けている包丁」。聞くところによると15年は使い続けているんだとか。
飲食店は厳しい。博打だし、身体が資本だし、なんといってもお客さんに満足してもらわなくては続かない世界。努力したって報われないことだって多い。ほら、先ほど紹介した「アルカリイオン水で氷を作る」ということだって、気が付かない人だっています。やきとりは仕込みが命です。焼きだって大切ですが、焼くまでに仕事は多く、それが味を決めていきます。焼きあがるまでに隠されていることの多さと大切さ。飲食に入って気が付くことの多さに、驚かされます。もしかしたら高橋さんもそうだったかもしれません。
「父親は全然教えてくれなかった、盗むしかなかったね」と当時のことを思い出しながら、いろんな思い出があったことがうかがえる、そんな静寂がありました。
そこには誰も知る由もない、世界があります。
「最近は飲みながらゆっくりやってます。疲れちゃうしね」
肩肘張らない彼の言葉や表情はホスピタリティとはかけ離れた、お客との間があります。この笑顔、これがお客を安心させているんですよね。
撮影用に串を何本が焼いてもらっていると、扉がガラリと開きます。まだ営業前なのに、何も言わずにカウンターへ座っていく。その自然な流れに、ふと舞台が上がる前の劇場を思い出しました。開場と開演の間。それがカウンターに漂っていました。自分のボトルを手に取り、ホッピーで割りながら開店を待つ。
開店前にすべての席が埋まりました。さあ、今宵も舞台があがりました。
「なにとなに」
「なにから」
「きゅうり」
そんな言葉が飛び交います。
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まるで目の前の大縄跳びにうまく入るタイミングをうかがうように、声と静寂の間をぬって注文する。高橋さんの聞こえるか聞こえないかの「はい」を頼りに、待っていると目の前に「祖師谷で一番といっても過言ではない」串が置かれます。その味はもう、説明するまでもありません。カウンターの間合いを楽しめるようになったら、もう、あなたは祖師谷の夜の楽しみ方をひとつ知ったことになります。
久しぶりに親父を誘って飲みに行こうか、そんな気持ちにさせてくれる心地いいお店です。