千歳船橋駅前にあった「ミュージックショップ ノヴァリス」さんが閉店しましたね。現在は洋服を販売するショップになっています。
1991年に創業したノヴァリスさん。演歌系などコアなファン向けのコンテンツを取り揃えていたので安泰かと思いきや、いきなりの閉店で驚きました。まさか、と言葉を店前でこぼしてしまいました。
やっぱり音楽業界は厳しいのでしょうか。。。
肌で感じるだけではなく、資料を紐解いてみることで、現在の音楽業界がどのような姿なのか考えてみます。日本レコード協会さんに詳細な調査結果を見つけましたので、今日はそれから考えられることを書いていきますね。
何気なく音楽に触れている人が増えている
YouTubeを筆頭に無料サービスで音楽に触れる人が圧倒的に増えています。実に7割の方々はYouTubeで新曲を聞いています。テレビやラジオで聞いて、CDを購入して自宅でじっくり聞く、という構図はもう皆無ですね。テレビで見て、YouTubeで再生。またはサブスク(いくら聞いても定額)の音楽配信サービスで再生する。CDなどはよほどデザインが好きとか、そのアーティストが好きだから手元に置いておきたいという人しか買わなくなりました。これは費用対効果としてもある程度考えられる変化だったともいえます(1曲づつ買うこともができることも大きいし、アルバムで買うことも減りました。迷って買って、『やっぱ失敗した!』っていうことも皆無ですよね)
意外だったのは「音楽への無関心さ」を浮き彫りになったことです。若い年代はまだこの人の曲が聞きたいという主体的な方向で音楽を聴き、音楽にお金を使っているのですが、50~60代の実に約4割は何気なく音楽を聴いている、または音楽にお金を使っていないという調査結果が出ています。意外にも年齢が高くなると音楽へ使うお金は減っていく傾向にあります。いったい何にお金を使っているんでしょうね。
CDがサブスクの音楽配信サービスに抜かれた
視聴方法についての調査です。1位がYouTube、2位はテレビ、3位はサブスクの音楽配信サービス(AmazonプライムやSpotifyなど)でした。CDはサブスクに次いで4位。形あるものを買って聞くということから変わりつつあるのを感じさせてくれます。
そのサブスクは利用者は20〜30代が5割を占めます。10〜20代はサブスクの支出が増えたと実感しているので、今後増加するのか、それとも無料に流れるのか分岐点に来ているようです。
サブスクの利用時間帯についての調査結果もありました。20〜40代は通勤時間に視聴してます。50〜60代は通勤時間は利用する人は少ないので、スマホで音楽以外のコンテンツを見ているか、本を読んでいることがわかります。
面白いのは大体どの年代層も2割方入浴時にサブスクを視聴しています。ただ、30代はずば抜けて数値が少なく、6%の利用。その代わりに就寝時に一番利用している世代でした。入浴時には使わずに、聴きながら寝るという独自の生活スタイルを確立していますね。何かドラマの影響があったりするのでしょうかね。
配信型ライブの参加意向が年代でかなり違う
コロナの影響で配信型ライブへの支出が増えてます。アーティストのファンだからというのはどの世代も同じなのですが、年代間の参加する意味合いがかなり違っています。
12〜19歳は「アーティストの売り上げに貢献したいから」という理由が年代間でトップ。ファンであり、リアルのライブが中止になり、支えていきたいという思考が見えてきました。50代は一体感を味わいたいから、という理由でトップでした。自分が楽しい時間を過ごしたいのか、それとも応援するアーティストを守るために参加するのかと、大きく意味が異なっているなぁという印象を持ちました。
コロナでCDの売り上げは増えている
やっと、千歳船橋駅前にあった「ミュージックショップ ノヴァリス」さんに関係する調査結果になってきました。意外にもコロナでCD購入は7%増えていますが、外出が減ったため、実店舗での購入が減っているという結果が出ています。Amazonなどの宅配サービスを利用することが多いようです。
まとめると
CDというメディアの形にこだわる人も減っていますが、何気なく聴いている人の割合も増えています。ということは音楽がYouTubeやテレビなどで生活に浸透しやすいけれど、お金にはなっていないという実情が見えてきました。実際、音楽に払う金額も2018年から2019年を比較してひとりあたり5000円くらい減っている状況です。コロナ禍でのライブの中止、YouTubeなどの無料サービスが多大な影響を与えています。
今後どのようになっていくのでしょう。
予想は全くできませんが、光がチラリとみえています。それはコロナが終わったらライブに行きたいという回答の多さと、若い人たちのアーティストを支えるための経済活動です(配信型ライブに参加する理由が「アーティストを支えるため」が各世代で一番になっていることなど。それにしても若い人は健気というか、そんな聖人のような目的でライブ配信を視聴しているのかと驚きました。。。)。
それにしても思います。この5年で大きく音楽業界は変わったなぁと。まずは音楽は聴くものから発信するものへと大きく変貌しました。限られた方法でしか自分の曲を発表することができないわけではなく、ボカロで曲を作り、YouTubeで発表する。ヒットすればテレビで歌うこともできる。そのうち、テレビで歌うメリットもなくなっていくんだろうと思います。そして聞く方法だって激変しました。自分はSpotifyを使っていますが、好みをAIが判断して似たような曲調を自動で選曲してくれる。今まで聞いたことがなかったけれど、「これ、好き」と思うような曲やアーティストとの出会いが気軽に、日常に、頻繁に行われる。
この新しいアーティストとの出会いというは昔は頻繁には訪れませんでした。年に1度、または数年に1度あればよかったものですし、誰かにおすすめされてたまたま「いいね!これ!」となる、まさに「奇跡」的なものでした。それがいとも簡単に体験できるわけです。
昔はよかったなどという気持ちは一切ありません。もっとアーティストにお金を落とさなくては、とも思いません。時代が変わってきていることや、無料を支える広告主体のビジネスモデルはいつまでも続けばいいと思いますが、もしかしたら破綻するかもしれない。破綻してしまったら、今ある数々の素晴らしいサービスはほとんどが崩れていくわけで、それを想うと怖いなと思うこともあります。Googleの地図サービスだって、YouTubeだってすべてなくなってしまうわけです。
それらのサービスがすべて崩れた時には何が残るのかな?とふと思いました。そんなときに残るのは大切に残してあった思い出のCDだったりするのかな?と。たしかに便利なサービスが世にはあふれているので、今更と思うかもしれませんが、たまにはアナログのレコードを回したり、CDをかけたりする時間があったもいい。そんなことを千歳船橋駅前にあったCDショップを想いながら考えました。