それな!

若者言葉っていうのは意味や使い方をわかったとしても、使うのは難しいものですよね。電車とか、飲み屋のカウンターなどで耳にして「あっ、あの言葉、聞こえた!」ってことで心が踊ったりするものです。まったくもって自分が使うことは想定できない。恥ずかしい。恥ずかしいことをハズイというみたいですけど、その恥ずかしいことを表現するのにも、恥ずかしくて「ハズイ」という言葉を選ぶことはできません。迷った挙句に(とはいっても1秒もないほどの刹那ですが……)、は、恥ず、かしいと、「かしい」をおまけに取られないように注意しながら発音する始末です。

もうかなり使い古されて、使えるタイミングを逃しまくっている若者言葉に「それな」がございます(表記の仕方もわからない。もしかしてソレナかもしれない)。この前、千歳船橋にある某飲み屋さんのカウンターでお酒を飲んでいまして、友人がトイレに立った時にふと、周りから聞こえたのです。それな!とたぶん教科書通りのイントネーションと合いの手とタイミングで私の耳に届き、美しい、そして尊いと感じるほどでした。

少し耳を傾けていると彼女は「それな」を多用します。1分間も経たないくらいに3回ほど使っています。それだけに相手の気持ちに寄り添う優しい人間なのだと感じておりました。文脈としての使い方は「そうそう」という感じと「わかってるよ、そうだよね」という感じで、驚きは少しだけにじみて出ているくらいの使い方でした。うんうん、そうそう、その使い方に私は「それな!」と言いたくなる気持ちをグッと抑えて耳を傾けておりました。

事件があったのはそのすぐあとのことです。

どんな文脈だったのかは忘れてしまいました。彼女はあいかわらず「それな」を多用しており、そんなにそれなを使っているとあだ名が「それなちゃん」になっちゃうんじゃないかと危惧していると、彼女はいきなり、いうわけです。

そ、それな!

って。昭和世代にとっては「まじで?」を思い出せるほど同じくらい強い語気で発せられた「それな!」。会話の流れからして「え?ありえなくない?」という言葉が使われそうな場面だったと思います。合いの手として使われるフレーズだと思っていた「それな」の活用形とでも進化系とでも申しますか。私はその活用形なる「それな」に「おお!」と心を躍らせてしまいました。ぜひ、使ってみたい。その、それな。

たぶん、こんな場面で使えるかと存じます(夢想)。

  1. 会計でQR決済が使えると思ったのに「現金のみです」とスタッフに言われて、財布を持ってきてないとき
  2. カギをずっと探していたのに、左手に持っていたことに気が付いたとき
  3. もうその話3回目ですよ、と後輩にいわれたとき
  4. 愛猫とじゃれ合っていたとき、ふとした時に猫パンチで爪が出ていたとき
  5. 久しぶりに出会った旧友の名前が出てこなくて、たぶんこれだと呼びかけた名前が違っていたとき
  6. レトルトカレーの甘口しか食べられないのに、辛口だったとひとくち目に気が付いたとき
  7. 急いで電車に乗ったら、逆方向だったと気が付いたとき
  8. 仕事から帰ってきたらTシャツが前後ろ、うらっ返しだったとき
  9. 今日は頑張ったからと大切にとっておいたアイスクリームを食べようと冷凍庫を開くが、先週食べてしまったことに気が付いたとき
  10. 大幅に寝坊したとき

そ、それな!があれば、人生のどんな場面も対応できるような気がします。人生には「そ、それな!」。心強い言葉をいただきました。

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