特性ということ

きっかけはAくんの話だったんだ。

ハンドソープを最後まで出し切るAくんの話を聞いてさ、思ったんだよね。ああ、世の中にはいろいろなものの見方があって、Aくんもそう見てくれた人がいたから、今があるんだなぁって思ったんだよ。

Aくん? 自閉スペクトラム症と呼ばれる「特性」をもった優しい男の子だよ。「もう入ってないよ」ってハンドソープがカコカコっていうまで、ポンプを押し続けるんだ。周りのひとは「どうしてそんなに出すの?」って思うけど、Aくんは出し切ることに一生懸命。だから、Aくんはこの音が鳴るととてもうれしくなるんだよ。やった!!出し切ったぜ!ってさ。

ね? ちょっと分かったかな? Aくんがなんでハンドソープを一生懸命出すのか。全部出したいんだよ。使う分だけ出そうとか、こんなに出したら無駄になっちゃうなーなんて考えない。全部出したいのさ。でもね。周りのひとたちはAくんのことは分からないよね。なんでこんなに出してるの?もういいじゃん!十分じゃん!ってなるよね。

わからないことって不安だよね。怖いよね。わからないまま見なかったことにしちゃう人もいるかもね。でもね、安心して。Aくんがやろうとしていることをみんなに教えてくれたり、どうしてハンドソープを全部出しちゃうのかAくんと一緒に理由を探してくれる人たちがいるんだよ。わかるとさ、あー!そうなのか!なんだー!ってなるよね。Aくんのことがわかるとさ、怖くなくなる。そしてさ、Aくんも生活しやすくなるんだよね。そんなことができる人たちがいるんだ。すごいよね。

その人たちは療育の先生たちだよ。療育(りょういく)はAくんたちが生活しやすくするようにサポートすることなんだ。

さっき話した、自閉スペクトラム症っていうのはほかの人と話すことが苦手だったり、ハンドソープを最後まで出す!っていうように強いこだわりを持っている人たちのことで、発達障害といわれるもの。病気ではなくて、その人たちが持っている特性だね。

療育の先生にこんな人がいるんだよって話を聞いたから少し紹介するね。

みんなは蛍光灯を見てもチカチカしないよね。蛍光灯のなかには電子っていうとっても細かい電気の粒が1秒間に何万回っていうものすごい速さで飛んでいて、それがぶつかることで光っているんだけど、そのぶつかるのが見えちゃう人がいるんだよ。だから、蛍光灯を見るとバババババーーーーーって細かく光るから眩しくて見てられない。ほかのひとが見えない動きが見えるっていうのはものすごい能力だけど、蛍光灯があると困るよね。そこにいるのが苦痛になっちゃう。それでね、療育の先生は職場の方に、サングラスをかけてもいいですか?って話してくれたんだ。それで職場にいても眩しくなくなったんだって。

多動症っていうじっとしていられない人たちもいる。いつも動いているわけではなくて、最初は座っていられるんだけど、10分など時間が経つと立ち上がって動き回ってしまうんだ。それからずっと動いているかっていうとそうでなくて、少しすると落ち着いて座ることができるようになる。療育の先生は聞いたんだって。どうして立ち上がって動いちゃうの?って。そうしたら、ここら辺がムズムズするんだよ!ってお尻と背中のつなぎ目あたりをさすったんだってさ。

先生のすごさってここにあるんだなぁって思ったよ。ムズムズするならしょうがない。どうしようもないほどにムズムズするのに、座ってなさいっていうのは拷問だよね。それなら、10分おきに「ゴミ拾いタイム」にしてみればいいじゃないって言うんだよ。そうすればみんなは不思議に思わないし、彼だって動いてすっきりすることができる。

大切なのはどうしてなのかわかることと、そのためにどんな方法があるか考えて見つけることなんだよね。
世界は広いし、いろんな人がいる。知らないことは怖いと思う気持ちもわかる。でもね、そのわからないことをみんなに伝えて、障害をもつ人たちが住みやすくする、生活が少しでも過ごしやすくなるように方法を見つけている人たちがいるんだよ。今日はそんな人たちのことを知ってもらえると嬉しいなぁ。

ボクも正直怖かったよ。Aくんのような特性をもった人たちのことを知りたいんだけど、どんなことを聞いてはいけないのか、どんなことを書いてはいけないのかと、「いけない、ダメ」ってことばかりに気を取られていて、神経質になっていた気がする。それでね、とりあえず、療育の先生に話をしてみたんだ。そうしたら、こんなにステキな人たちがいるんだって知ることができたんだ。まだわからないことばかりだし、考えなくてはいけないことはものすごくあると思う。でもね、考えたこと、聞いたことをわかりやすく伝えていくという一歩をあゆみ始めることにしたんだ。

それでね、みんなにも考えて欲しいなぁ。障害ということを。それをつなぐ架け橋をしている人たちのことを。

次回は療育の現場を見学させてもらえるといいなぁと思っていて。頭で考えることも大切だし、話を聞くこともとても大切だけど、実際に見て考えてみたいな。

(協力/社会福祉法人 嬉泉

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