HANAYA フラワーアレンジメント 旧岩崎邸庭園/湯島

上野近くにある旧岩崎邸庭園で「旧岩崎邸建築125・重要文化財指定60年記念事業 映像でつづる岩崎家とその時代 祝華 ~生花で祝う125年~」が行われています。2021.10.28-11.3まで祖師ヶ谷大蔵にある花屋のHANAYAさんが、フラワーアレンジメントで旧岩崎邸を彩りましたので行ってまいりました。

旧岩崎邸。誰の邸宅だよと思いますよね。ボクも思いました。答えは三菱グループの3代目社長、岩崎久彌さんのおウチです。三菱グループといえば、銀行、商事、重工業を核とする旧財閥のひとつです。キリンビール、ENEOS、NIKON、ローソンなども含まれています。毎月第2金曜に「金曜会」というグループ会長・社長が集うランチ会が開催されることでも有名ですよね?(って私はそんな世界一緊張するランチ会を知ったのはつい最近のことでございますが) と、三菱グループの話をどんどん広げても話はとんでもないことになりますのでこの辺で。

旧岩崎邸は自宅兼ゲストハウスだったわけでございます。その建築125年を記念したイベントで、HANAYAさんにお声がかかりました。HANAYAさんって祖師ヶ谷大蔵駅前にあるよくある花屋さんじゃないの?って思いますよね。2019年に開催された「フラワーデザインコンテスト」で2冠(農林水産大臣賞受賞)するなど、実は結構すごい花屋さんなんです。

今回の装飾を依頼された経緯は「正直なところ、わかんないんだけど」といいつつ、この2冠が関係してるんじゃない?とHANAYAのオーナー、秋田真吾さんは話していました。

3日まで展示されていた5作品がこちら。

ハイライトは和室のアレンジメントです。見学コースの最期にある和館の広間に入ると、野バラの赤い実を存分に使った優雅な作品が目に飛び込んできました。見事の一言です。旧岩崎邸はイギリス人建築家が手がけた建築物なので、和館があることはあまり知られていませんが、このいかにも和風な空間に、どっしりと構えるアレンジメントが、郷愁の気持ちを誘うというか、やっぱりと心を落ち着かせるというか。わびさびという言葉を使えばおさまりは良いのでしょうが、その言葉でまとめたくないような、気持ちにさせられました。

枯葉ではなく、生きている「秋」を存分に感じせれる、そんな秀逸な作品でした。

秋田さんに伺ってみると

「最初に和館の広間はシンプルにしたくて一種活けを決めたんです。紅葉の枝では一週間鮮度を保つことは難しいので、野バラの枝を選びました。ほかの4つの作品は広間へとつなげていくアプローチとして、どこかに野バラを使っています」

ということでした。そして続けた言葉がよかったです。

「自分がアレンジメントを楽しむのはもちろんなのですが、自分だけ楽しむではなくて、見てくれる方々も楽しい気持ちになってほしいと思ったんですよね。気持ちを共感していただいて、できれば感動して欲しいなと。それで秋らしい素材にしようと思ったんですよ」

と。

アレンジメントって深いですよね。見ている人たちをどんな気持ちにするか、それが大切。作り手がどうしたいかではなく、どんなメッセージを見る方々に伝えていくか。そこに思い至ると少し花屋さんの仕事が見えてきたような気がしました。花束って、そう考えるととても難しい商品なんだなーと。

誰かにプレゼントする花束。注文した人にも満足してもらい、その人が渡したときに、相手も幸せな気持ちへと動かしていく。同時に二人のお客さんを楽しませていくのだなと思いました。

たとえば夫婦といえども別の人間です。どんなことを美しいと思ってきたかは千差万別です。その違う二人をひとつの花束で楽しませていく。花にはものすごい力があるのはわかりますが、その力をどのように操作していくか。これがフラワーアレンジをする花屋さんの腕の見せどころなのですね。

今回は5つのアレンジメントで「野バラ」を使った動線を配置して、最後にきらびやかに魅せる……、そんな立体的な、複次元的なアレンジメントを楽しめたような気がしました。やっぱり誰かの作品をじっくりと見るというのはいいものですね。皆さんも「芸術の秋」しちゃいましょう。見るだけでもいいし、何か絵を書くでもいいし、写真を撮るでもいいし。

あー、花屋さん、スゲーなー。湯島でそんなことを思いました。

HANAYA
https://www.instagram.com/soshigaya_hanaya/

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