サンセリテ/グラタンカレーパン220円

これは革命だと思います。

なんの?って、それはカレーパンの革命です。

たった220円で楽しめる世界観ではない、と大げさにいうと、そんな言葉すら出てきます。

サンセリテは祖師ヶ谷大蔵にある天然酵母パンの店で、週末でなくても、ランチどきや夕方前などは店内は戦場になっています。言葉を選ばながら書きますが、コロナ禍はもう過去のものではないかと思うほどの混雑ぶりです。

そこで見かけたカレーパンの最終進化形態ともいえる絶品が棚に並んでいました。

トップの画面をみるとよくわかるのですが、このカレーパンは

STEP
STEP
  1. チーズ
  2. ホワイトソース
  3. カレー
  4. パン

という夢のようなミルフィーユになっているのです。迷わずトングでつかむと、異常に重い。手がつりそうになる。トングからパンがすり抜けるほどに重く、重力を見つけたニュートンのことを思い出すほどでした。Eテレの「おもってたんと違う」というキャッチフレーズが頭のなかで木霊しました。

作り方は想像でしかありませんが、一度カレーパンを揚げて、くりぬいてポケットを作り、そこにホワイトソースとチーズをのせて、オーブンで焼きを入れる。手間はかなりかかっていると思います。作り手の愛すら感じさせられてしまう、そんな世界にふたつとない「カレーパン」です。

サンセリテさんは食パンといっても過言ではありません。レジ上などのデッドスペースに所せましと並ぶ、ちょっと窮屈そうにしている食パンたち。ここに並んでいる食パンたちのほとんど(もしかしたらすべて)が予約されていて、すでに行き先が決まっている。もしかしたら、食べ方だってもう決まっているのかもしれません。このおウチは4枚ぎりにしてトースト。こちらはあんバターを塗ってそのまま食べる、とかね。

そんなサンセリテの主力商品たち、レギュラーメンバーである「食パン」がかすむほどのカレーパンでした。ボクのなかではすでにかすんでいます。こんなずっしりとしていて、カロリーの塊だろうに、最後の一口とさよならするのが寂しさに包まれるパンがほかにあるでしょうか。たぶん、ないでしょう。

この写真を見てください。何か感じることはありませんか?

ここにこそ、美学があります。それは……、チーズの高さです。切り抜いたパン生地の高さと、チーズの高さがあっているんです。ここを合わせていくパンはね、すごい。何がすごいって、それは食べやすさをしっかりと追及していることなんです。

安直にこのパンを作ると、たぶん、チーズとかホワイトソースが「でろりん」とパン生地からこぼれます。こぼれないとしても、盛り上がることになりかねない。そうするとどうですか? 少しの高さを食べるひとは意識します。その段差を乗り越えて、きれいに食べようとする。そして、人によっては顎関節症になるわけです(ウソ)。

顎関節症は言い過ぎですが、段差があることで、気がほかに向いてしまう。カニに味はどんなだったか忘れるほどに、ほじくることに集中してしまうカニを囲む会の団欒。いかにおいしく食べたかではなく、楽しい時間を過ごしたかではなく、いかにカニと向き合ってしまったかということを、団欒が終わったときに愕然としながら反省するわけです。

そんな悲劇が訪れます。普通のグラタンカレーパンの場合は。

でも、サンセリテの場合は違います。気を遣うことなく、このパンに噛り付くことができる。そして、4つの味が混ざり合った夢のような、そう、いろいろなヒーローが登場する映画『アベンジャーズ』のようになった口福の瞬間に酔いしれることができるわけです。

切るとこんな具合です。

切ってもソースはこぼれない。まさに人間工学に基づいたパン作りとなっているわけです。素晴らしいの一言にすべてが集約されていきます。

味はどうなのか?

それは愚問です。ここで紹介する料理はおいしいことが当たり前です。わざわざおいしいと書く必要はありません。おいしいから紹介する、それにつきます。シンプルイズベストです。ああ、目をつぶれば、このパンの味わいがよみがえってきます。もう、その記憶があればワインは進むし、白米だって食べられます。それほどまでの味わいでした。

もしかしたら、サンセリテに並ぶ方々の目当ては食パンではなく、このカレーパンなのかもしれません。そんなことに今更ながら、気がついた秋晴れの午後のひとときでした。

サンセリテ
https://soshigaya.com/store/sanse/

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