「どうしてショウガを使ったメニューが多いんですか」と伺ったときのこと。「とくにこれといったキッカケはなかったのですが、会社の同僚と好きな食材の話になったときに、なぜか私はショウガを挙げていたんですよね。」と店長の椎木さんは答えてくれました。
カフェグリーンジンジャーにはお菓子に、ドリンクに、カレーにと、ショウガを使ったメニューが並びます。そして、カフェの名前は1700年代からイギリス・ロンドンで作られている「グリーン・ジンジャー・ワイン」から。「グリーン・ジンジャーには『初々しい』という意味が込められているんです。お店を始める前に強く思った初心。これをいつまでも忘れちゃいけないと名前にいただきました。」と椎木さんはお店を始めたころのことを教えてくれました。もう、どこまでもショウガ。そう思っていたら、どうもそうではないご様子。
「大学を出て、ラッシュという会社で働いていた時なんですが、ショウガって日本で考えるのとちょっとイメージが違うなと思ったんです。とくにヨーロッパなんですが、海外だとショウガってセクシーなイメージなんですよ。女性向けのフレグランスや石けんにはショウガが配合されていたり。ショウガが使われているとパッケージに色っぽい女性があしらわれていたり。」この経験が、椎木さんの心の奥に何かひっかかるものを残したのかもしれません。カフェをオープンするにあたり、ショウガをレシピに加えるようになっていきました。「でも、それはそれなんです。カフェがやりたいのはショウガにこだわりたいからではないんですよ。」と椎木さんは続けます。
スペインでバルを訪れたときのこと。誰からともなく店を訪れては集い、前日のサッカーの話をしたり、伝言を残していく……、椎木さんは、そんな素敵な場所に魅せられたといいます。
「この店はまだ始まったばかりですが、スペイン・バルのような、あるいは村の集会所のような存在になっていってほしい。」といいます。ここに来れば誰かがいる。お客さん同士がつながっていく。「何々さん元気?」と聞けば、ほかのお客さんが「元気ですよ、この前いらっしゃったときに……」と話が広がっていく。まるでじんわりと体を温めてくれるショウガのように、人の優しさで温めてくれる街の掲示板。もしかしたら、ここはもうそんな場所になり始めているのかもしれませんね。
残念ながら、2016年12月29日で閉店いたしました。麗さん、お疲れ様でした
本誌で連載中の「ウララのひとレシピ」はこれからも続いていきます。