「ワインが好きだから、前菜とメインを食べて、〆にピザを食べたい。そんな自分のやりたいことを形にしただけなんです。」と話すのは店長・後藤さん。いわばこの店は趣味みたいなものなんですと続けます。
自然体っていうのが大切です
お話を伺っていると、後藤さんって自然体だなと感じることが度々ありました。先ほどのどんなお店にしたかったという話もそうですし、最近よく飲むワインもそうです。「イタリアのワインは確かにおいしいんですけど、飲み疲れちゃうんです。」とのこと。だから日本産のワインをよく飲むし、お店でも扱っているんですと話してくれました。イタリア料理なんだから、イタリア産ワインを並べるのが当たり前。そんな分かりやすいイタリアンではなく、『食』というものを楽しむ、そんな自由な空気に包まれているお店です。
後藤さんがナポリで修行していたときのこと。「ピザって日本で思うよりもかなりカジュアルなんですよ。5歳くらいの女の子がパパッと具をのせて焼いて、それをお店に出しちゃうよな。」まるで蕎麦屋の〆にざるそばをすするような、ピザにはそんなカジュアルな雰囲気があるといいます。ナポリのピザと同じような軽快なリズムがこのお店は漂っているのかもしれませんね。
アオジの由来
「僕の実家に毎年帰ってくるんですよ。お店なんで、お客さんが帰ってくるという験担ぎなんですけれど、店名にいただきました。」これは店名に入っている「アオジ」の話を伺ったときのこと。アオジはウグイスを思い出させるような美しい黄緑色の小鳥。日本をはじめ、東南アジア、インド、ロシアなどで見かける渡り鳥で、日本では北海道などで繁殖し、中部などで越冬する鳥です。
そんな渡り鳥の話を伺っていて後藤さんのことを思い出しました。日本美術をやってらっしゃるご両親への反発もあって、彼は日本を離れてイタリア・ナポリへ旅立ちました。イタリア料理の修行をして帰国した後、ふと気が付くことがあったとか。それは日本文化の良さに改めて気が付いたこと。「歳を重ねると落ち着くんですよ」とちょっと恥ずかしそう、でもうれしそうに話す後藤さんが印象的でした。
一度離れたものに戻っていく、その姿って何かに似てませんか? そう、それって渡り鳥のアオジみたいですよね。